大判例

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大阪高等裁判所 平成元年(行コ)31号 判決 1990年7月12日

京都府向日市寺戸町西田中瀬二番地二一

控訴人

藤原康裕

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都市右京区西院上花田町一〇番地一

被控訴人

右京税務署長

深田庸雄

右指定代理人検事

下野恭裕

法務事務官

田原恒幸

大蔵事務官

松野英親

大蔵事務官

小崎安高

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和五九年七月六日付でした、控訴人の昭和五六年分の所得税の所得金額を、四八六万九、〇〇〇円、同五七年分の所得税の所得金額を五四四万八、〇二八円、同五八年分の所得税の所得金額を六四四万三、四九〇円と更正した処分のうち、昭和五六年分につき一九二万五、〇〇〇円、同五七年分につき一九一万七、〇〇〇円、同五八年分につき一八二万円を超える部分及びそれに対応する各過少申告加算税の賦課決定処分を、それぞれ取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者の主張

原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。但し、次の付加、訂正をする。

一  主張の訂正等

1  原判決三枚目表七行目の末尾に続けて「本件各処分の前提としての調査手続に違法な点はない。」を加える。

2  同四枚目裏一行目から同二行目にかけて「(算出所得金額」とあるのを「(売上金額から売上原価及び一般経費の合計額を控除した金額―算出所得金額―」を改め、同裏六行目の「仕入金額」の次に「(別表2の<7>)」を、同裏一〇行目の「控除した金額」の次に「―算出所得金額―」を、それぞれ加える。

3  同七枚目裏九行目の「別表3ないし7」を「別表3ないし8」と、同九枚目表九行目の「前記1」を「前記(二)」と、同一〇枚目表四行目の「少数」を「わずか」と、それぞれ改める。

4  同二一枚目(別表1)の「裁決」欄の各日付が、「昭和六一・一二・五」とあるのを、「昭和六一・一一・二七」に改める。

二  当審での主張

被控訴人

控訴人の当審での甲第五号証の一ないし五二(日計台帳及び出勤帳)の提出は、国税通則法一一六条一項に違反するから、時機に遅れた攻撃防御方法の提出として却下されるべきである。

第三証拠

原審及び当審の各証拠関係目録の記載を引用する。

理由

一  当裁判所の判断は原判決の理由一ないし五(原判決一〇枚目表末行から同一九枚目表末行まで)と同一であるから、これを引用する。但し、次の付加、訂正をする。

1  原判決一〇枚目裏四行目の「しかし、」の次に「税務調査の手続上の違法は、それに基づく課税処分自体を当然に違法とするものではないうえ、」を加える。

2  同一〇枚目裏七行目は冒頭から同九行目までを全部削り、そこに次項を挿入する。

「いるものではない。そして、原審証人岸本卓夫及び同津田保則の各証言によれば、本件各処分の前提としての調査は、適法に行われたことが認められる。そうすると、控訴人のこの主張は、採用できない。」

3  同一〇枚目裏一〇行目の次に次項を挿入する。

「原審での控訴人の本人尋問の結果によれば、控訴人が、本件係争各年当時、被控訴人主張の各営業(但し、自宅の二階で宴会業をも行っていたかどうかについては、後記認定のとおり)を行っていたことが認められる。」

4  同一〇枚目裏末行の「必要性」の次に「(抗弁(一))」を加え、同一一枚目の表五行目の「亘り」を「わたり」と、同枚目の裏九行目の「乙第五」から同末行の「六〇号証、」までを「乙第五ないし第三八号証、第三九号証の一、二、第四〇ないし第六〇号証、」と、それぞれ改め、同裏末行の「原告」の前に「原、当審での」を、同一二枚目表二行目の「原告」の前に「右」を、それぞれ加える。

5  同一二枚目表五行目の「(一)」の次に「(同業者の選定と標準値の算出(以下(三)まで))」を、同一三枚目表六行目の「控除した金額」の次に「―算出所得金額―」を、同枚目裏九行目の「11の者」の次に「(昭和五六、五七年分)」を、それぞれ加え、同一四枚目表四行目から同五行目にかけて「二・二七パーセント」とあるのを「二・二八パーセント」と改める。

6  同一四枚目表六行目の「(四)」の次に「(スナック業及びすし製造販売業の同業者による推計の控訴人への適用の合理性)」を加え、同行目の「被告主張の推計」を「被控訴人主張の推計の控訴人への適用」と改め、同表八行目の「営んでおり、」の次に「かつ」を、同表九行目の「あったこと」の次に「、したがって、営業の条件や業態について控訴人には特殊な事情があること」を加える。

7  同一四枚目裏二行目の「原告本人尋問の結果は」を、「原、当審での控訴人の本人尋問の結果は、」と改め、その次に「、原審証人津田保則の証言によって認められる、控訴人自身が、昭和五八年一二月五日の調査の際に津田保則に対し、宴会は年数回程度しか行っていないと答えた事実及び原、当審での」を加える。

8  同一四枚目裏四行目を全部削り、そこに次項を挿入する。

「してにわかに惜惜し難い。

また、この点に関する控訴人の主張に沿う証拠として控訴人が当審で提出した甲第五号証の一ないし三七(日計台帳)は、当審での第三回口頭弁論期日(控訴人の本人尋問が行われた期日)になって初めて提出された。しかし、右本人尋問の結果によっても、右証拠の提出が、控訴人の責に帰することができない理由によりその申出(提出)を遅滞なくすることができなかった事情が明らかでないことを考慮すると、国税通則法一一六条一項に違反し、同条二項、民訴法一三九条一項により却下さるべきものである。

しかし、この点はしばらくおくとしても、右書証中、控訴人が「二階宴会場」での売上げを記載したものであるとする記載部分には、次の不自然な点がある。

ア  右日計台帳は、当初は、各日付ごとに売上げを「現金」、「貸売」及び「入金」に分けて記載されており、右「入金」欄については、もともとは「貸売」とされていた分の入金の一部を記載していたものと考えられるところ、この「入金」欄の記載が、係争年度である昭和五六年一月に至って急に「2階」とされて二階宴会場での売上げを記載する形に変化している。

イ  右「2階」欄の記載の中には、同日付の「現金」及び「貸売」欄のボールペンの色と明らかに異なった色のボールペンをもってなされているものがある。

ウ  「現金」又は「貸売」欄の金額が抹消され、これと同一の金額が、同日付の「2階」の欄に記載されているものがあり、その大半は「貸売」欄の金額の抹消に対応するものであるところ、「宴会の方の売上は現金に限っており、貸売はない」旨の当審での控訴人の本人尋問の結果に照らすと、「貸売」欄の金額の抹消とこれと同一金額の「2階」欄への記載は、不自然である。

エ  「2階」欄の記載の中には、「入金」を示す「入」の文字を抹消してその上に「2階」と書き加えたものや、「入」の文字を残したままこれを括弧内に入れてその前に「2階」と書き加えたものがある。

オ  甲第一号証に記載された昭和五六年一月の三六名の宴会、同第二号証に記載された昭和五七年一二月の四〇名(一人あたり五千円)の宴会に対応する記載は、右日計台帳の対応月欄にはみあたらない。

以上のような点に鑑みると、前記書証中、控訴人が「二階宴会場」での売上げであるとする記載部分は、後に追加、改ざんされたものである疑いが強く、到底信用できない。したがって、これをもって、控訴人の前記の「自宅の二階で宴会業をも行っていた」旨の主張の裏付けとなる証拠とするわけにはいかない。

そうすると、控訴人が同所で宴会を行うことがあった」

9  同一五枚目の表四行目の「(五)」の次に「(玉子焼の仕入率による推計の合理性(以下(七)まで))」を同表八行目の「ものであり、」の次に「かつ」を、それぞれ加え、同枚目裏一行目の「売上原価」を「売上金額」と、同裏五行目の「とくに」から同六行目の「回答)」までを「特に原審証人津田保則の証言」と、それぞれ改める。

10  同一五枚目裏九行目冒頭から同一六枚目表六行目までを全部削り、そこに次項を挿入する。

「(七) さらに、控訴人は、玉子焼について前記のようなスナック業、宴会業への流用があったから、玉子焼によるすし製造販売業の所得金額の推計は合理的ではないというが、本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、控訴人が自宅二階で宴会業を営んでいたことも、控訴人のすし製造販売業とスナック業の間に仕入れの流用があったことも、いずれの事実も認めることができないから、右主張は理由がない。」

11  同一六枚目裏二行目の「別表2」を「別表A(本判決添付のもの、以下「別表A」というときはこれをさす。)」と、同裏三行目の「前示四(三)」を「前記認定」と、それぞれ改め、同行目の「平均値」の次に「(別表Aの<3>)」を、同一七枚目表五行目の「仕入金額」の次に「(四八万二、三六四円)」を、同表六行目の「仕入金額」の次に「(別表Aの<7>)」を、同表九行目の「平均値」の次に「(別表Aの<10>)」を、同枚目裏五行目の「別表3ないし8各<7>欄」の次に「(別表A<14>及び<16>欄)」を、それぞれ加える。

12  同一八枚目裏一行目の次に次項を挿入する。

「結局、本件係争各年分の利子割引料は、別表A<17>欄記載のとおりとなる。」

13  同一八枚目裏五行目を全部削り、そこに次項を挿入する。

「成立に争いのない乙第六六号証、原審証人津田保則の証言、前掲乙第」

14  同一八枚目裏一〇行目の「別表9」から同末行の「としたこと、」までを「別表9記載の計算方法でその建築費を推計し、」と、同一九枚目表三行目の「計算し」から同四行目冒頭の「とした」までを「計算した」と、それぞれ改める。

15  同一九枚目表六行目冒頭から同七行目までを全部削り、そこに次項を挿入する。

「会計原則にのっとったものと認められる。

これにより計算を行うと、原判決別表9の一平方メートルあたりの工事費予定額は一二万一、五二一円、同じく平均工事実施額は一二万三、九五一円、控訴人建物の推計建築費は三、三八六万九三四円となり、したがって、右建物の毎年の減価償却費用は六六万七、七九五円となる。」

二  以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件各処分は、いずれも、前記認定の控訴人の本件係争各年分の各事業所得金額の範囲内でされた適法なものであって、過大認定の違法はなく、控訴人の請求はいずれも理由がない。そうすると、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古嵜慶長 裁判官 上野利隆 裁判官 瀬木比呂志)

別表 A

原告の事業所得金額の計算

(数字の下に下線を引いた部分が原判決別表Aの数字を訂正した部分である。)

<省略>

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